【結論】「速い=地上」だけじゃない!ジャンル別に“最速動物”が存在する!
「世界一足が速い動物」と聞けば、多くの人がチーターを思い浮かべるでしょう。確かにチーターは地上最速ですが、“水中”や“空中”の世界に目を向けると、そこにはチーターに負けないスピードの持ち主たちがいます。実は、それぞれの環境には独自の“速さの王者”が存在しているのです。今回の記事では、ジャンル別に動物たちの「速さ」を掘り下げ、意外性と納得感のあるランキング形式でご紹介します。「なぜそんなに速いのか?」という背景にも注目してみてください。
地上最速の動物たち
1位:チーター(112km/h)
猛ダッシュはまるでスポーツカー。0→96km/hがわずか3秒という加速力は、F1マシンにも匹敵します。
特徴:しなやかな背骨がバネのように体をしならせ、走るたびに強力な推進力を生み出します。さらに、大きく広がる鼻孔で酸素を多く取り込み、長い尾でバランスを取りながら、急カーブも華麗にこなします。なお、全力疾走は約20秒程度しか持続できません。
2位:プロングホーン(アメリカカモシカ)(約88km/h)
チーターには劣るものの、長時間スピードを維持できる点ではプロングホーンに軍配が上がります。
特徴:心肺機能が極めて高く、筋肉中のミトコンドリア密度も多いため、80km/h前後のスピードを数分間も維持できます。プレーリードッグやコヨーテなどの捕食者から逃げ延びるため、進化の過程でこの能力を獲得しました。
3位:グレイハウンド、カンガルー
グレイハウンド(約72km/h)
ドッグレース界の王者であり、人間が飼育した哺乳類の中では最速。
特徴:細長く引き締まった体は空気抵抗を最小限に抑え、後肢の強力な筋肉が爆発的な加速を可能にします。レースでは短距離(約500m)を一気に走り抜けるため、スタートダッシュが命。
カンガルー(約70km/h)
跳ねるスピードでは最速クラス。持続的な移動速度も高く、50km/h以上を数分間保つことができます。
特徴:巨大な後ろ脚と筋肉質な尾を使ってバネのように飛び跳ねます。跳躍時にはエネルギー効率が高く、草原を長距離移動するのに適した体になっています。オスの成体は、危険を感じると驚異的なスピードで跳ねて逃げます。




空中で最速の動物たち
ハヤブサ(390km/h)
地球上で最も速く動ける生物。急降下時のスピードは戦闘機レベルとも言われています。
特徴:空中から急降下して獲物を襲う“ストゥープ”という狩りの技術が特徴で、空気抵抗を最小限にするために翼を折りたたみ、弾丸のように突っ込んでいきます。獲物に接触する寸前で速度を緩め、鋭い爪で仕留めるという巧妙さも兼ね備えています。
ハリオアマツバメ、オオタカ、マダラカシワバエ
ハリオアマツバメ(水平飛行 約170km/h)
急降下ではなく水平飛行でこのスピードを出せるのは驚異的です。
特徴:長く鋭い翼は空気を切り裂き、風の流れを捉えながら効率的に推進力を生み出します。主に空中で昆虫を捕食して生活しており、飛行時間は年間9割を超えるともいわれています。まさに“飛ぶために生まれた鳥”です。
オオタカ(水平飛行 約130km/h)
森林の中でもスピードを落とさずに、障害物をすり抜けて獲物に襲いかかります。
特徴:広い翼と短めの尾でコントロール性を保ちつつ、滑空と羽ばたきを組み合わせて素早く飛ぶ戦術を取ります。空中でのターン性能も非常に高く、小動物や鳥類を逃さず捕らえる優れた狩人です。
マダラカシワバエ(推定60〜100km/h)
小さな体ながら一瞬で視界から消えるスピード。
特徴:飛翔筋の収縮スピードが非常に速く、羽ばたきの回数は1秒間に数百回。高い空気力学的効率を誇り、飛行中の急旋回や後退飛行も可能です。昆虫の世界でもトップクラスの敏捷性を誇ります。




水中最速の動物たち
バショウカジキ(約110km/h)
地上のチーターに匹敵するスピードを水中で発揮する、“海のチーター”とも呼ばれる存在です。
特徴:槍のような吻(ふん)で水の抵抗を極限まで減らし、尾びれをリズミカルに打つことで加速します。高い瞬発力を活かし、魚の群れを切り裂くように突進して狩りを行います。体の構造そのものがスピードに最適化されているのです。
クロマグロ
マグロ(クロマグロ)(約70km/h)
巨体でも泳ぎは俊敏。時速70kmに達する泳ぎで、長距離の回遊をこなします。
特徴:流線型の体と筋肉質な尾びれ、さらに血流を保温する特殊な循環機構を持っており、冷たい海域でも素早く動けるのが強み。持続力にも優れ、泳ぎながら狩り続ける“海の狩人”です。

「速さ」は進化の戦略だった!
急加速型・持続型・空中機動型の違い
チーターのように地上での加速に特化したものもいれば、ハヤブサのように空中で重力を味方にする戦略をとるものもいます。さらに、バショウカジキやマグロのように、水中という密度の高い環境で効率よく泳ぐための進化を遂げた例も見逃せません。
速さが生き残りに与えた影響
また、速さには「急加速型」「持続型」「空中機動性」など、いくつかの分類があり、それぞれの動物が自分の生態に合った“速さのかたち”を持っています。環境が異なれば進化の方向も異なる。つまり、「速さ」とはその動物がどのような捕食・逃避戦略を選び、生き残るためにどの道を選んできたのかを示す、一種の“進化の履歴書”ともいえるでしょう。
まとめ
順位 | 動物 | スピード | 環境 |
---|---|---|---|
1位 | ハヤブサ | 390km/h(急降下) | 空中 |
2位 | チーター | 112km/h | 地上 |
3位 | バショウカジキ | 110km/h | 水中 |
4位 | ハリオアマツバメ | 170km/h(水平) | 空中 |
5位 | プロングホーン | 88km/h | 地上 |
6位 | グレイハウンド | 72km/h | 地上 |
7位 | カンガルー | 70km/h | 地上(跳躍) |
8位 | クロマグロ | 70km/h | 水中 |
9位 | オオタカ | 130km/h(水平) | 空中 |
10位 | マダラカシワバエ | 推定60〜100km/h | 空中 |
参考文献
- Garland, T. (1983). The relation between maximal running speed and body mass in terrestrial mammals. Journal of Zoology.
- Tucker, V. A. (1998). Gliding flight: Speed and acceleration performance of birds. Nature.
- Fish, F. E. (1996). Transitions from drag-based to lift-based propulsion in mammalian swimming. American Zoologist.
- 『動物の驚異的な世界』ナショナルジオグラフィック日本版
- 『最強生物ランキング』池田書店