20世紀最大の嘘と
否定されたタウング・チャイルド

進化バナシ㊴

 

こんにちは!そして初めまして!

動物バナシの管理人、ユーイチです。

以前タウング・チャイルドについて

お話をしました。

タウング・チャイルドについてはこちら

否定されたタウングチャイルド   アウストラロピテクス・アフリカヌス

 

その話の中でタウング・チャイルドが

発表された時一般的に強く否定されました。

でも不思議だと思いませんか?

新しい学説が否定されることは

分からなくもないですが

歴史に残る事件となると

かなり珍しいです。

では何故、タウング・チャイルドは

そこまで否定されたのでしょうか?

これには当時信じられていた説と

時代背景が強く関わっています。

またその中には

20世紀最大の詐欺とも呼ばれる

ピルトダウンマンが関わってきます。

それではタウング・チャイルドが

否定された理由は

どういうものなのか?

それでは早速行ってみましょう。

タウング・チャイルドの発表

タウング・チャイルドこと

アウストラロピテクス・アフリカヌスの

論文をレイモンド・ダートが

発表したのが1925年です。

この論文はNatureに

掲載られました。

ダートはアフリカヌスを

生きた類人猿と人間の

中間にある絶滅した類人猿

と表現したんです。

つまりこのタウング・チャイルドは

人類のミッシングリングの1つ

と主張したのです。

この主張こそが当時の学界から

タウング・チャイルドが

猛烈に批判された理由です。

なぜならこの時代は

人間は大きな頭脳を二足歩行よりも

先に獲得していたと

考えらえていたからです。

その前提で話すならば、

タウング・チャイルドは人類の

ミッシングリンクにはなりえません。

何故ならタウング・チャイルドは

脳の容積は小さかったですが

二足歩行は既に獲得していた

と考えられる為です。

当時の学会も同じ結論を出し

タウング・チャイルドは

ミッシングリングにはなりえない

と結論付けられました。

三人の学者による激しい批判

ダートを特に強く批判したのは

3人の学者によるものでした。

その学者とは

アーサー・キース

グラフト・エリオット・スミス

アーサー・スミス・ウッドワード

この三人が中心となり

タウング・チャイルドを

強く批判をしていました。

誤解がないように言いますが

この三人の学者はそれぞれが

世界的に有名な学者であり

その道においては素晴らしい功績を

残している人達です。

しかし、この三人には

タウング・チャイルドを否定する

理由がありました。

何故ならこの3人は

ピルトダウンマンを支持する

立場だったからです。

この当時の学説では

人類の発祥はヨーロッパかアジア

だと信じられていました。

お気づきでしょうが

これは人種差別的な発想

背景としています。

 

その為、アフリカで発見された

タウング・チャイルドが

人類のミッシング・リンクとする説は

到底受け入れられなかったのです。

 

進化の時間

チャールズ・ダーウィン

「種の起源」を発表したのが

1859年です。

これも当初は多くの議論を呼び

批判を招きました。

ですがタウング・チャイルド発表時の

1925年は進化論は

受け入れられてました。

少なくても人間は進化によって

出現したと考えられていました。

ですが、現代のように

僅か数百万年前のような

短い期間での進化とは

考えられていませんでした。

この当時の人類学者は

ホモ属は3000万年前に

大型類人猿と別れた

信じていました。

しかしアフリカヌスは

僅か200万年前の化石であり

更に脳が小ささから大型類人猿と

断定されたのです。

何よりもピルトダウンマン

タウング・チャイルドの存在を

認めさせなかったのです。

それほどまでに

ピルトダウンマンの存在は

当時の西洋人類学者にとって

待ち望んでいたものだったのです。

その為、タウング・チャイルドが

強く否定されることになりました。

ピルトダウンマン

左がピルトダウンマンの頭骨
右が現代人の頭骨

ピルトダウンマンとは

20世紀最大の詐欺とも言われる

化石です。

ピルトダウンマンの発見者は

アマチュア考古学者の

チャールズ・ドーソンです。

ドーソンは1912年に

人間と類人猿の間の

ミッシングリンクを発見した

と主張しました。

その主張を支持したのが

先程の3人の学者を中心とした

イギリスの科学者たちだったのです。

三人の学者とは

アーサー・キース

グラフト・エリオット・スミス、

アーサー・スミス・ウッドワード

の事です。

ドーソン達が見つけたのは

頭蓋骨の破片と

顎の骨と歯でした。

それをウッドワードが

再構成した結果

 

頭蓋骨は後頭部と

脳の大きさを除いて

現代の人類と酷似している

 

と発表したのです。

そしてウッドワードは次に

 

二本の臼歯を除けば

顎の骨は若いチンパンジーの

顎骨と区別がつかない

 

とも言いました。

当時のイギリスでは

人間の進化は脳から始まったと

信じられていました。

頭蓋骨が人間で顎が類人猿という

ピルトダウンマンは

正にイギリス学会が待ち望んでいた

ミッシングリンクだったのです。

あばかれた嘘

とは言え、

ピルトダウンマンには

当時から懐疑的な意見が

出ていました。

特に物議を醸しだしたのは

犬歯の存在だったのです。

先程も言った通り

顎の骨はチンパンジーと酷似

しているわけです。

ここで問題なのは

それにも拘らず臼歯が人間と同じ

という点です。

実は歯を調べれば、

その生き物が何を食べていたのか

顎をどう使うのかの予想がつきます。

歯と顎についてはこちらもどうぞ

歯の並びで見分ける  人類と類人猿

ピルトダウンマンは

ここに大きな矛盾点が

含まれていました。

この矛盾を付いたのが

ピルトダウンマンを支持していた

アーサー・キースでした。

キースは

人間の臼歯は咀嚼時の

左右の動きの結果である

と指摘します。

ところが、

ピルトダウンマンの犬歯は

顎の左右の動きを妨げる

結果になりました。

そもそも上下にしか動かない顎ならば

大臼歯のような平らな奥歯ではなく

山形のギザギザの奥歯になります。

上の写真のように大きすぎる犬歯は

顎を左右に動かすには邪魔になります。

これを機に元々あった

ピルトダウンマンに対する

懐疑的な声がより大きくなりました。

そうすると1913年のNature誌に

ピルトダウンマンは

人の頭蓋骨と猿の顎の骨を

合成したものであると発表されます。

1923年にはドイツの解剖学者

フランツ・ワイデンライヒによって

現代の人間の頭骨と

歯を削ったオランウータンの

顎の骨であると正しく報告されました。

そしてとうとう1953年に

ケネス・ぺージ・オークリー

ウィルフリッド・エドワード・ル・グロ・クラーク

ジョセフ・ワイナー

の3人のイギリス人学者によって

この化石が偽造だと証明されました。

3人によれば化石は

3つの異なる種の骨を合成させて

作られていたとの事です。

ピルトダウンマンは

中世の人間の頭蓋骨

オランウータン

チンパンジーの顎骨と歯

で構成されていたそうです。

そして骨を染色して

歯をやすりで削っていた事も

明らかになりました。

これにより、古人類学の世界において

20世紀最大の噓と言われた

ピルトダウンマンの問題は

完全に終結するのです。

終りに

どうでしたか?

タウング・チャイルドが否定され

嘘で作られたピルトダウンマンが

西洋人の科学者に支持されていた

というのは時代を感じます。

これは当時の白人による

人種差別的な価値観や

宗教的な価値観などが

絡み合っていた為です。

その為、ピルトダウンマンのような

捏造化石が出てきても

信じられてしまうのでしょう。

しかし、この事件は私達に教訓となります。

ピルトダウンマンを支持していたのは

間違いなく当時の世界的な学者です。

しかし、そうであっても

自分の信じたいものを信じ

自分の見たいものを見たのです。

どんな実績があろうとも

どんなに賢くても

どんな権威があろうとも

人は間違いを起こします。

つまり、科学的姿勢を求めるならば

常に疑いを持ち、真実を追求する事が

大事であるという事です。

ですがピルトダウンマンの化石は

確かに捏造されました。

しかし人類進化の研究に

大きな影響をもたらしたのは

疑いようのない事実です。

そしその時代にあって

タウング・チャイルドを

人類のミッシングリンクとして

発表したダートの功績は

やはり偉大だと思います。

それでは今回はここまで。

最後までお読みいただき

ありがとうございました。

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